「黒のトイフェル」

「黒のトイフェル」
フランク・シェッツィング
ハヤカワ文庫

「黒のトイフェル 上」
(2009.09.29)

「黒のトイフェル 下」
「深海のYrr」の作者による、13世紀ケルンを舞台にした物語。

…本当に?「Yrr」の作者とは思えない、また違った雰囲気。
じゃあ、訳者が違うのか、とおもいきや同じ人物だった(北川和代)。
原作はドイツ語で書かれており、
たとえ輸入されていても、私は読めません。
まだ「あとがき」も読んでいないから、原作がどう書かれているかわからない。
けれど日本語訳の本書は「おいら」「わし」「俺」「わたし」などの一人称が並ぶ。
「Yrr」の登場人物は、ほとんどが何かの権威であったため
市井の人々はあまり出てこなかった。
今回は、大司教からこそ泥までさまざまな人物が登場する。
そして何より舞台が13世紀。
こそ泥が「罪の始まりの果実」を手にしたとき、
権力をめぐる陰謀に巻き込まれていく。
ライン川と城壁に囲まれた、豊かな商業都市ケルンで
何がうごめいているのか。

「自分の意見を持つことをやめ、ものごとの一部分だけを見るにとどまり、
すべての関連を考えることをやめれば、
それはこの世が壁のない石組みだけの教会になるようなもの」
真実、と思われるものを前に、人々はそれとどう向き合うのか。
しっかり見つめて考えるのか、それから目をそらすのか。
時を同じくして、しかし場所を移動(人物がいる場所)することによって
同じものを、まったく違う見方をする人々を描く手法は「Yrr」と同じ。
そして、手法は手法にとどまらないものを見せる。
登場人物たちは、自分の意思を持つのか、
持ったらどうするのかが迫られる。私にも。
(2009.10.02)
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by haraheri4 | 2009-10-03 07:57 | 読書 | Comments(0)