道草日和。

「事件」

「事件」
大岡昇平
新潮現代文学23 「野火・事件」

1961年から朝日新聞に連載され、
15年後に加筆修正された作品。
少年がナイフをもっていた。そして女が死んだ。
殺人なのか、傷害致死か、事故なのか。
詳細な裁判のやりとりの中で浮かび上がるものは。

新聞連載小説、というところに驚きを覚える。
作者自身があとがきで、
はじめは法曹界と神奈川県高座群の人しか読んでいなかった、
と書いているくらい、小説としては読みづらいものであるから。
私が不勉強だというだけではなく(それもあるけど)、
この小説はドキュメンタリーのように、
法廷でのやりとり、提出される書類が、
そのまま(といってももちろんフィクション)載っている。
普段使わない特別な用語、特殊な文体…
新聞小説として、みんなよくついていったものです。
でも、それら特別な言葉から「事件」が
最初見えていたものから変わっていく姿をみると、
読みづらさの困難さを乗り越えて、引き込まれる。

すべての「事件」が、このように審理されれば
私たちは冤罪などを生まなくてすむのに。
捜査の不手際が、裁判の中で指摘されているが
いまもそれはなくなっていない。
「事件」は、それを受けたもの、責任を負うものにとって深い傷になる、
「事件」をつかみ捜査し審理していく人は
それをよく知っていてほしいと思う。

舞台は(当時の)神奈川県高座郡。
私が育った地域に非常に近い。
長後、厚木基地、厚木駅前、大和警察署、鶴巻温泉、相模川。
勤め先は茅ヶ崎の自動車工場、裁判所は横浜地裁。
そこがどんな様子か、神奈川県の左半分?に住むものにはよくわかる。
裁判所の前のいちょう並木の様子が描写されているが、
現在本数が少なくなったとはいえそのとおりで、
作家が実際に足を運んだことがわかる。
長後もだいぶ変わった、
けれど今も小説が書かれた頃の姿を思い浮かぶことができる。
神奈川の人は、
60年代の神奈川の様子を思い出す(私は生まれていないけど)小説。
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by haraheri4 | 2009-10-11 14:34 | 読書 | Comments(0)
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