「すべての美しい馬」

「すべての美しい馬」
コーマック・マッカーシー
ハヤカワepi文庫

自然と夢と現実とに、
少年が正面からつきあっていく物語。
少年のものごととの付き合い方が丁寧、
たとえ命を脅かすものにも、夢を阻むものにも。
もっとも心をこめて彼がつきあうものが馬。
馬は美しく生まれるのではなく、
少年によって美しく育つのだと思わされる。
やけっぱちや、やんちゃや、斜めの姿勢ではなく
まっすぐな姿勢がまぶしい。
でも描かれ方は突き放されていて、いやみがない。

前回読んだ「血と暴力の国」でも思ったが、
ある人の人生がある場面でとうとうと語られ、
それについて、じゃあ少年はどう思うか、ということは語られない、
という手法に、作者の思いを感じます。
その人生に、悲惨だったり苦痛だったりする記憶に、
誰が意見や感想をいえるのだろうか、というような思い。

最初の数行、「これは読めないかも」と恐れました。
「これは読めないかもと思いつつも読んでみることにしようと決めてからそれでもなお読み進めていくには困難な長い長い道のりが続いた」
みたいな文章に「句読点をいれてくれー!」と叫びたくなるのです。
原語で読めない以上、訳者を責めることはできない、
きっと元の文体に近い訳なんだろう、と言い聞かせるも、
なれるまでは時間が必要でした。
でも、なれるとどんどん引きずり込まれます。
(2010.05.14)
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by haraheri4 | 2010-05-15 14:53 | 読書 | Comments(0)