「密やかな結晶」

「密やかな結晶」
小川洋子
講談社文庫

これを読み終えた日は調子が悪かった。
だからよけいに心に重く。

物語を心のごはんにして生きている、
私もその一人だけれど、そういう人にとって
この小説で最も衝撃を受ける場面はきっと
共通している。
そこで語られる彼女のせりふは、
歴史が繰り返し証明してきたから、
私たちは「たかが小説」と笑ってしまうことはできないのです。
およそ、はかないもの、美しいもの、甘いもの、
あってもなくてもいいけれどあると心がふわりとなるものは、
生きていくのに必需品ではない。物語ももちろん。
でも、そういうものこそ必要なのです、生きるために。
生きるのに必需品ではない、けれど大切なものが
奪われそうになっていることは、
私の心を奪おうとしているということ、
そのことを物語を通じておしえてくれる。

私は、物語から顔をあげて、
おしえてもらったことを現実にみる。
(2010.05.20)
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by haraheri4 | 2010-05-23 12:01 | 読書 | Comments(0)