道草日和。

「決壊」

「決壊」
平野啓一郎
新潮文庫

「決壊 上」
(2012.07.19)
「決壊 下」
(2012.07.20)

こわい思いをしながら
とにかく読んでしまおう、
と下巻は駆け抜けるように読んでしまった…もったいなかった。
こわかったのは事件そのものではなくて、
周りの人なんです。

つづきは以下で。
ネタばれ、含む。



一人称の変容や、名前の変態を見ながら
梶井基次郎や谷崎潤一郎をちょっと思い出す。
そこから、決壊は始まっていた。
タイトルが名づけられた時から
始まっていたのかも。
事件が起きなくても、
決壊は起こっていた、ってことなんだろうな。

愛は自分のためだ、
対面する人によって自分をカスタマイズする、
そういうのって嫌われるのかな。
でもわかる、わからない。

憎むべきはっきりした人物がいながら、
そいつよりずっと憎いやつがいた。
血を分けた者の疑いは、
身内を、身体を滅ぼす。
私にとって最も赦しえない人をあっさり赦しながら、
自分はもう、滅ぼされていて帰ってこられないなんて。
もう崩れている、それが読者にははっきり見えるのに、
あなたがそれを止められなかったなんて
(多分、誰にも止められないのだけれど)。
私は犯罪者よりそいつを憎むだろう。
そして、そうでしかない自分に
つくづく嫌気がさすだろう。

関わる人たちが、捨てられていく瞬間があった。
これもまた、決壊なのだろう。
一人称の中だけでなく、
文の主人も一文、二文の中でどんどん変わっていく文体で、
関わるすべての人を追いながら、
あるとき、それら全部を捨てていく。
その文体は、家庭・社会・システムの決壊とともに、
ただ一人の人間の決壊を、血が滴るような見せ方で示す。

こんなの、平野さんでしか書けないよ。
拍手、と鳥肌。寒気。
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by haraheri4 | 2012-07-28 18:03 | 読書 | Comments(0)
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